創作人外×人間本『Harmonics』について
テーマや設定などのこぼれ話になります。
【目次】
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- 本の概要
- 人外×人間の範囲
- テーマの話
- 導入フレーズ(未使用)
- 個別解説
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◆本の概要
『――それでも、互いに触れずにはいられなかったのだ』
植物多めな人外×人間フルカラーイラスト集
仕様:B5/p24/700円
発行日:2017.05.06 【通販サイト】
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それまでの同人誌は既に描いたイラストを収録していったものになるので、1冊作るために新規に1から描いていったはじめての本になります。
カラーマンガっぽいものを入れてみたり、いろいろな試みをしていたのは記憶に新しいです。
実はあとがきページがある意味一番おしゃれに仕上がっている気がしなくもない。
最初からコンセプトや枠組みを固めてから制作することの多い私にとっては、比較的自由に作っている、そんな本です。
◆人外×人間の範囲
掛け算表記にした時点で人外の造形そのものより「関係性」に重きを置いた内容だったりします。
『人外』の範囲は広く、「ガチ異形」「元人間の後天的人外」「もふもふ」「人間に羽の生えた天使」……などなど、あまり絞ってないです。
また、CPとしても男女、BL、百合全部がしれっと混ざっている性癖ちゃんぽん仕様です。
自分の性癖に素直なので厳密には性別のないキャラも2名いたりする。
個人的に好きなタイプの人外は人型装甲系だったりするのですが(特撮怪人をイメージするとわかりやすいかと)それ系に絞った絵もまた描きたいものですね。
◆テーマの話
【人外×人間】
「関係性」の中でも、元々の価値観が違うがゆえに分かり合えないのが好きです。
仲良くしているようでも、モノローグつけると全然違うこと考えてるようなやつです。にこにこしちゃうな!
全然噛み合わないことを考えていても、一緒にいることはできる。
それが一時か、死が分かつまでか、或いは輪廻の果てまでかはそれぞれですが。
【摂理への離反/植物と死】
もう一つの潜在テーマ。
摂理としての自然が世界観としてあって、それに敢えて反することのできる人間にはしっぺ返しが待ち受けがちなところがあります。そうです、私の創作内では人間キャラには厳しいです。
死というものも、人間的な自我の喪失と恐怖よりも自然的なサイクルのひとつで近しいところにある、そんな位置づけです。
◆導入フレーズ(未使用)
『出逢わなければ、なんて』
それは蔭口のような密やかな声色で、心の片隅、暗闇に近い処から響いてくる。
戻れない日々が、形無い人々が囁くのは「普通に生きていけたのかもしれない」という仮定の話。
歪でもいい。
これ以上どこにもいけなくてもいい。
どこか遠くへいってしまってもいい。
わたしにとっての世界は、
この巡り合わせ<あなたとの出会い>ひとつでいい。
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この文面だと舞台が現実寄りだと感じたので未使用となりました。
駆け落ち感があってこちらも好きではあります。
◆個別解説(一部抜粋)
手元に本がないとわかりにくい不親切設計でありますが、
ここから個別に覚え書きを書き連ねていきます。
『芽吹きを司る白鹿』
表紙・裏表紙。冬に出会い、春に離別する鹿と少女。
季節が逆のように感じるのは「摂理に反する」部分より。
『擬態する虫花』
絵的にはかわいい女の子絵、設定的には死体の皮を被っている虫魔物ということで……そういうのが好きです。擬態する上で中途半端に人間らしさを会得してしまい、そのように振る舞うところが怖くていいなぁと思ってます。
『森の民』『妖精』『黒鎧の魔物』
ここ3つは同じ世界観、元々小説で書きかけていた話から。
また、原型は先にワンドロで描いていた作品群でもあります。
中世ヨーロッパ程度の文明レベルで、森が過度な開拓をされると反旗を翻される世界の仕組みがある地で起こる、戦いと友情のお話。
友情とは書きつつも、白黒騎士組では「人間愚かだけどがんばってる姿大好きかわいい」の精神を向けられたり、傭兵+弓士組の傭兵だった方は友情や人間常識の概念を理解していないのでとてもすれ違いマッハ。でもそのおかげでみんな生き延びてはいる。社会と精神が無事とは言わないけども。
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◆関連世界観用語
【レーヴの深き森】
禍々しき魔道の森、奇形の住まう森などといった蔑称が存在する。発展し土地を求めた王国により開拓される。森に住んでいたのは耳の長い原住民、いわばエルフ。彼らは森が焼き払われると共に何処かへ姿を消し、されど今なお故郷を求めてやまないという。
【堕落の教団『深緑の徒』】
奇妙な魔術を扱い、時に人を、空間さえも連れ去ってしまうカルト教団。全容が未だ明らかになっていないは彼らが手段を選ばず、またそれ故かどんな姿、場所にさえ溶け込むからとされる。数少ない証言には酷く暗い色をした森へと消えたというものがある。
【黒騎士ロベルト=テオドール】
平民出の騎士。外国出身の相棒と共に王国内では有名で愛される騎士だった青年。ある時唐突に上司、同僚その他を斬り捨て出奔する。よい国を作りたいという理想に燃え、騎士として大変真面目で熱心だった――指導者が、疎ましいと思うほどに。
【白騎士エリザ=ローウェン】
女性的な外見の男性。本当は女性ではないかと噂は後を絶たないが真偽は不明。ロベルトの無二の相棒で、細かいことを苦手とする彼の代わりに書類や武具の調達など多くのサポートを請け負っていた。その信頼と比隣は彼が失踪する際も変わらなかった。
【歪な暗い森の魔道】
森を焼かれた(便宜上)エルフたちが作り上げた、帰ることのできぬ故郷の森。人に裏切られても人を愛せる強靭な彼らの精神なら、幻覚さえ維持できればそんな歪な場所でも過ごすことができる。引き込まれた者にとっては、到底耐えられるものではないけれど。
【樹木の民エリザ】
白騎士エリザは(便宜上)エルフにあたる。人間社会に溶け込む上で耳は切り落とした。今日の絵の耳は義体になる。黒騎士の彼を気に入り、魔剣を与え、彼を輝かせると同時に周囲の嫉妬を増勢した。生き生きとして欲しいのはまったくの本心で、慈愛に満ちている。
『極彩の鳥』
極彩の羽ばたきに恋い焦がれ、少年は自らの道を狩人と定めた。振るう槍は血の一滴も零さぬよう。然して彼は願いを叶えたのだ。
「――これでやっと一緒になれたね!」
朗らかで明るい絵ですが、焦がれた鳥を自ら狩って装飾にしてるのでいつもの文章読むとアレ系の絵です。楽しい。
『黒竜』『異形の王』
こちらも原型は先にワンドロで描いていた作品群。
明確にヤンデレ百合。愛した姫様を竜に変えたこともそうですが、自らの下半身と融合している辺りメイドさんはとても独占欲が強い。
そんな個人的暴走から相反連動した別の国が滅びの憂き目に合う不幸の連鎖。
でも両方の国で根深い差別意識があるので遅かれ早かれだったかもしれない。
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◆関連世界観用語
【黒針森の待女フロイレシア】
月のように美しい銀髪を持つ王女に仕えていたメイド。魔法都市に住まう彼女も少なからず魔力を持っていたが、王女にはそれがなかった。それ故に王位を得られず望まぬ結婚をさせられる王女を憐れみ、同時に独占したいと願った。
【黒針竜メリディローア】
フロイレシアの半身と一体化した魔物。非常に硬い表皮を持ち、針の森の落葉を物ともしない。誰にも触れられないよう、感じることのないよう、あの月のような美しさを知ることのないようにと、願いの魔法がかけられた産物である。
【反射する大きな月】
黒針森が生まれた際に、その反動として上空の空間に光の亀裂が生じた。月を遠ざけたいと願ったが故に、距離感を錯覚させ月が酷く近く見えるようになった。錯覚でしかないのだが、その月光はあまりに眩しく、森を歩む者の目を眩ませて足を踏み外させてしまう。
『天使』
分かりやすく堕天使!な絵を描きたくなって原稿後半戦に描いたもの。BL枠。
あまり豊かな時代ではない想定なので、やや血色悪く、でも骨と肉を感じるような塗りを目指していた、ような気がします。
『カーバンクル』
本にはキャプションを載せていないのですが、もふもふとの触れ合いのようでいて祖語のある系テキストが以下になります。pixivにも絵を載せていたからそちらには書いてあるだろうと思ってたら載せてなかったことに気がつきました。えー。
奇跡のような魔石を身に宿した宝玉獣。その力ゆえに、この愛くるしい生き物たちは身勝手に乱獲されて、石を奪われ、数を減らしていった。
――そんなことが、許されていいのだろうか。
だからこの子を守ろう。それが私にできる、小さな誓いでも。
◆
ねがいをかなえるために“いし”がいる。
ねがいごとはなに?――かなえるためにぼくらはいるよ。
ねがいごとってなに?――かなえるためにぼくらもヒトもうまれて、いきてるんだよね。
なのにこのこはなでるばかり。つかわないの? いらないの? どうしてだろ?
……ヘンなの。
『魂の護り手』
ストレートに書けば自殺者の魂の行き先。異形は檻であり、守護でもあります。
触れる温かさや柔らかさは持ち合わせていませんが、流れ来る鎮魂の花びらは通してくれます。
『炎の悪魔』『星の民』
同一世界観。「魔術師×星の民」で物語の区切りで見ればそれぞれハッピーとバッドに見えるメリバEDのお話。
「星の民」はヒトの形を模している生命エネルギーが擬人化したような種族であり、流れ星のような特性を持つ。彼らに性別は不必要なのでない。
「まっすぐである(=優しくされたひとりの相手に対しすぐ惚れてしまう)」
「願いはすぐに叶う(叶えてしまう/それが破滅的なものであろうと、規模が大きかろうと)」
最初は自我が薄いので物心つく前に生贄的な消費をすることが多いのだが……恋を抱いてしまうと他を巻き込んでの成就と相成る場合があり、星の取り扱いは危険なのである。