初版グリム童話モチーフ SS+イラスト本『Grimore』制作設定

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初版グリム童話モチーフ SS+イラスト本『Grimore』
テーマや設定、レイアウト関連などのこぼれ話になります。

【目次】
    1. 導入
    2. テーマの話
    3. 紋章
    4. 個別解説

◆導入

『グリム童話は何故残酷なのか?』
イラスト本という装丁でありながら、同時にこれはしばしば話題にされる問いに対する、私なりの考察作品でもあります。

より善良な世になるべく人々への教育を、歴史に息づくものを遺すことを、子供たちへの物語を、と。
かの兄弟は時に降りかかる人生の苦難に膝を折ることなく成し遂げた。
その願いが果たされて、多くの人に語られる今がある。

……時に――。

電飾に拓かれ、平穏に守られた現代と異なり、森は深く、法は整っていない過去の時代。
見舞われることも多かったことだろう、理不尽への怒り、喪失への悲しみに。
……そして、それらに誰もが耐えられるわけではないのだ。

口伝えで残された物語から黒い森に魔物を見るように、
影を感じ、それらに心奪われた編者はいかなる物語を編纂してゆくのか――。

“――物語には魔物が棲まう。それが人のカタチをしていても、美しい姿で描写されていても。”
“なればこそ、血を含んだ大地の、黒き森のさざめくこのグリモワールは地獄であらねばならない。”

仕様:初版グリム童話モチーフ SS+イラスト本 A5/p20/600円
発行日:2018.11.25 【通販サイト】

◆テーマの話

イラスト本の皮を被った論文。それが「Grimore」という本です。いきなり堅苦しい。
ここより、全体と個別の覚え書きを抜粋していきます。
細かく解説してくよりは箇条書きの制作メモですね。

—————

・グリム童話ダークファンタジー
・イラスト本の皮を被った論文
・感情:怒り、傷み、抑圧からの解放(爆発)、暴力性
・過去の精算
・『地獄は何のために存在するか?』(⇒人々の願いのため、裁きは不当に対する怒りから)
・女性から男性への潜在殺意(社会的抑圧)

・参考文献は初版のみ。教育的抑圧/改竄は含めない
(これは物語として美しくしようと努力した部分なので、上記地獄にフォーカスする本作ではマッチしないため)
・兄弟が編集したものではないので「KHM順」にはしない

◆紋章

何気にテキストの背景にある紋章も手製だったりします。
装飾デザイン方面で遊びたかったのもこの本での目的のひとつ。
せっかくなのでこの記事内で紋章単独で載せようと思います。

元が童話なだけあってモチーフがかなり具体的なので要素の選択には困らなかったのと、
最終的にテキストが被さるので気楽に作るのが楽しかった代物です。

◆個別解説

手元に本がないとわかりにくい不親切設計でありますが、
ここから個別に覚え書きを書き連ねていきます。

前書き:『夜うぐいすとめくらとかげの話』

・魔道書
・血と不当を感じた怒りで綴られた書
・ナイチンゲールとメナシトカゲ
・植物ランプと伸びる影
・光が当たり、影が生まれる

表紙:『いばら姫』

百年の眠りが約束された予言なら、今ここにいる相手なんかに興味はないわ。
わたしを美しいと褒めてくれる?
どうせ次目覚めた時には土の下で白骨になるだけなのに??

・表紙に持ってきたので該当紋章はなし。

『灰かぶり・シンデレラ』

・役割を受け入れるキリスト性
・優劣のある、“選ぶ”有限の世界
・王冠とガラスの靴/人間よりも象徴物が本体とされる
・ヒール靴の女性不利な部分
・社会で女性がバリバリやっていく感(そしてやりにくい感)

『白雪姫』

・対母親への感情。思いやりと憎悪
・親への無条件の信用(捨てられたと思っていない)純粋さ
・美しさとは純粋さ
・透明感(絵的に)

『ヘンゼルとグレーテル』

・子捨て/口減らし
・黒い森
・貧しかった当時との時代の違い
・手放したものが戻ることのないように(死者が蘇る物語にならないように)
・罪悪感から逃れるための幻想
・かまどの火⇒灰になる

『星の銀貨』

・豊かさ
・無限の富/宇宙のありよう

教訓的に読み取りやすく、またそのように多くの解釈ができる話ですが、
以前どこかで見たこの話が戦争の集合意識であるという説が気になってます。
どこからその発想が出たんだろうか。

『赤ずきん』

・魔物:獣人
・花:スズランなど毒のある花
・子供らしいしたたかなずる賢さ
・おばあちゃんに毒ワインを持ってきた赤ずきん
・介護放棄
・耳・目・手・口、兄弟の本来の物語ではないので問いかけの順番は変わっている
・口までは言わせない
・死人に口なし

『ラプンツェル』

・領域、テリトリー、境界線
・魔物:仙人、蜘蛛
・花:ハス
・(魔女=イマジナリーフレンド、よき理解者)
・引きこもりのぬくぬく感・停滞・モラトリアム、部屋でゆっくり休む時間、静寂
・情報制限・アレルギー的外部への過剰反応
・不要な男は追い出して殺す

『千枚皮』

・スキン/肌の不快感
・男性性への気持ち悪さ
・宝物/見つけてほしい
・潔癖/触れられたくない
・魔物:擬態/カメレオン

実の娘に結婚を申し込んだ系ストーリーゆえ「えっ」となることもある話なので
こういうところに時代の違いを感じたりします。

『白鳥王子』

・約束の反故からの贖罪の旅
・再会の約束「より良くなっていつか会おう」
・放蕩息子/楽園追放
・少年時代的なラブ

収録した中で一番好きな話です。
(グリム童話全体では『夏の庭と冬の庭』が最も好きです)
版を重ねると収録されなくなっており、マイナーな話かもしれません。
それでなくとも有名な話を前の方に載せる順番にしています。

『屠殺ごっこ』

※テキストなし
(血で子供のらくがきをするとか、タイトルを塗りつぶすとか)
・裏設定的に読めば、グリモワールの編者の子供がここで殺されている。そのやり場のない(子供の無垢さが原因だから責めようがなかった)復讐心を時代と社会的貧しさにぶつけて編纂した
・写真っぽさ
・画面外に血が流出している=現実との影響

例のアレ。
「初版」というワードでこれだと気づく方もいたかもしれない。
もしかしたら実際あったかもしれない妙なリアルさを感じる話かもしれない。

裏表紙:『金の鍵』

・終わりの話は金の鍵なので、そこは様式美として。
・青髭も少し連想されるように。染み着いた血は落ちないので。