――新たな都市を築いて、ここを第XXX番目の月とする。

月への執着。それは宇宙空間へ移住の旅に出た民が求めたもの。
太陽に代わる熱源と光源は生命活動の最低条件として必須であったが、月もまた異なる役割を果たしていたと知るのは後のこと。
宵を人工灯で照らしても、星屑が空を覆っても、流星群が電磁帯を連れてきても、それでも「あれ」が必要だった。あの仄かな光が齎してくれたのは引力による調律か、精神の安寧か、或いは発展した科学で計り得ない何かしらだったのかはまだ解明されていない。
しかし失われてはじめて気づく憧憬は、その後の都市計画に大きな影響を及ぼす。
……そうして彼らは、いくつもの。

2018.08.25