雨音のベールは現を曇らせ、靴音をも吸い込んでゆく。
視界の端に映る、悲しみの青、別れの紫。それは浮かびゆく過去の思い出の色彩。
されど雨はあらゆる感情を流してくれる。溶かしてくれる。遠ざけてゆく。

叶うならば、河が氾濫するほどにこれから先が多くの幸が溢れるように。
できることならば、新しい人生は今まで見てきた悲哀のないものがいい。
別離は歩みを止めた時だけでと願うなら、その身はもう還らざるものと決めてしまおう。

――それは新しい門出。

2018.06.26