『かつて天使と悪魔が争った逸話のある地』
見たこともない存在を信じない者からすれば、荒廃した遺跡や色彩の薄い空、白黒に咲く花がそんなお伽噺を生み出したと推測するだろうか。群生する花は形こそ似通っているのに、まったくの別種であるらしい。そして隣合わせで長く咲いていられない性質を持つ。白と黒と、黒と白と。互いを食い合い、領土の侵略を繰り返す様が今なお続く戦争の証のようだとロマンチストを装い学者は言う。
逆に神話のような存在を信じている者はこう感じるのだろうか。彼らはもう花に、或いは星に溶けてしまっただろうか? それとも、未だ石柱の残骸を墓標に眠り続けているのだろうか――? などと。

2017.07.24