ハロウィンイラスト2019

【Halloween Night】
2019.10.31

収穫祭の前には墓参りを。
咲いたランプを摘み取って、森の広大な墓所へと渡す。それは生命の循環だ。

――Happy Halloween!
よい夜を、よい祝祭を。

   ◆

森の始祖の墓所は広大だ。
数十年に一度、長い長い夜の訪れが祝祭のサインとなる。

暗闇に聞こえる葉擦れは恐ろしい魔物のような不安を掻き立てるものだが、
不安だけに囚われることのないようにと森が配慮でもするというのだろうか。
肌寒さの帯びる季節と共に、捻じくれた枯れ枝にぼうっと葉脈を透かしたランプが咲く。

生きとし生けるものはこの祝祭に参加する権利がある。
麓の住民も、森の生物も、忘我に誘われた者も、死の淵に足をかけた者も。

儀礼の形式は案外自由だ。
道中に咲いたランプを摘み取り捧げてもいいし、
硬い果物をくり抜いて作ったランタンを持参してもいい。
捧げものは代わりの何かでもいい。
命に満ちたものならば貴賤は問わない。
誰もが生まれた時から持ち得るたったひとつの持ち物であっても、快く受け取ってくれるだろう。

それが終われば、人々にとっては命を喜び大いに飲み食い楽しむ祭が続く。
これを“収穫祭”と呼ぶのは、1年で蓄えられた実りのことだけではなく、儀礼で森に捧げた光がこれから先々命を満たすことを感覚で知っているからか。

捧げた数だけランプの茎は枯れて地に落ち、その光を失う。
自然の摂理の中で、不思議と数の帳尻合わせが為されているように。
――そうしてすべてのランプが落ちるまで、長い夜は続くのだ。

ハロウィンは万聖節の前日である、というところがとても好きです。